FileMakerの優れた特徴の一つに、強力なネットワーク機能が挙げられます。このネットワーク機能を安全に最大限活用するには、「FileMaker Server」が必要になります。
実は、普通の「FileMaker Pro」でも簡易的なサーバー機能がついています。これを「FileMakerクライアントと共有」といいます。
FileMaker Proを使用した共有と、FileMaker Serverの違いを解説します。
FileMakerファイルの共有とは
「共有」とはどのようなことを指すのでしょう。わかるようでわかりづらいのが「共有」という機能です。
共有とは、一つのFileMakerデータベースファイルに複数人で同時にアクセスしてデータを参照したり入力したりすることを指します。例えば、「在庫管理データベース」があったとします。どこの店舗からでも、ネットワークを介して在庫状況を確認することができるわけです。注文があれば残りの在庫数を登録し、他の店舗からどのくらいの在庫があるのかを即座に確認することができる、といことです。
共有機能を利用するための正当方として、「FileMaker Server」という共有専用のアプリケーションが販売されています。FileMaker Serverは平たく言うと「共有」に特化したソフトであり、単体ではデータベースを作成することはできません。
データベース自体は、「FileMaker Pro」または、「FileMaker Pro Advanced」でなければ作成できません。作成したデータベースファイルを、FileMaker Serverに登録することで共有することができます。
FileMaker Serverのデータベースへのアクセス方法はどのように行うのでしょうか?「FileMaker Pro」または「FileMaker Pro Advanced」を利用しながら、FileMaker Serverのデータベースにアクセスします。
つまり「FileMaker Pro」または「FileMaker Pro Advanced」は、データベースの作成意外に、FileMaker Serverのデータベースに接続できる機能が付いているのです。※ OS上のファイル共有機能とは意味合いが異なりますので、注意が必要です。例えば、FileMakerデータベースファイルを共有フォルダなどに保存しておいても、複数人で同時に開くことはできません。
逆にいえば、「FileMaker Pro」または「FileMaker Pro Advanced」がインストールされているパソコンでなければ、共有ファイルにアクセスすることはできません。
以下にローカルに保存してあるファイルと、FileMaker Server上にあるファイルを開いた画面のスクリーンショットをのせています。見ていただけばわかると思いますが、全く同じように表示されています。FileMaker Serverのファイルにネットワーク経由でアクセスしている際にも、レイアウトの変更や、テーブル・フィールド・レコードの作成などのカスタマイズ機能も利用できます。もちろん、アカウント設定で権限を持っている場合の話です。
FileMakerは、データベースとして一つのファイルをあらゆる場所からアクセスしてこそ、本領を発揮すると言えるでしょう。この機能を使いこなすには、共有できることの意義の価値を理解しなければなりません。
最初に述べたよう、FileMaker Pro単体にも簡易サーバー機能がついているのです。ただ、同時接続数に制限があり、最大で5人が同時接続できます。
FileMaker Serverを利用したいけど、価格的にも少し敷居が高いと感じている方は、試しにこの「FileMakerクライアントと共有」機能を利用してみるのもありだと思います。
けれども、いくつかの注意事項があります。
- アクセスされる側(サーバー機)となるコンピューターは、常時起動していなければなりません。同時に、アクセスされるファイルは、常にFileMaker Proで開かれている状態でなければなりません。
- 先ほども述べた通り、5人(5台)までの同時接続が可能です。5という数が多いか少ないかはデータベースの用途によって変わってきます。
- インターネット経由でアクセスする場合も、イントラネット経由でアクセスする場合も、ネットワーク通信は暗号化されません。セキュリティ的には脆弱です。
- FileMaker Serverにあるような、ファイルの強力なバックアップ機能はありません。ファイル自体が壊れてしまうと、最悪の場合データが復元できません。スクリプトで簡易的にバックアップファイルを作成することはできます。
これ以外の注意事項もあるかもしれませんが、間違いなく言えることは、業務用として利用するには適切ではないということです。まず、ネットワーク通信が暗号化されない時点で危険です。取り扱うデータにもよりますが、アカウント名とパスワード自体が暗号化されずにネットワーク上を行き来するわけですから、まず個人情報が含まれているデータを扱うような場合は絶対にだめです。
したがって、FileMaker Proに標準で付いている共有機能を利用する場合は、限られたローカルネットワーク上で悪意を持った第三者などがいない場合に使うことを前提に利用すべきだと思います。
FileMaker Serverのメリットは?
- SSL(Secure Sockets Layer)によるネットワークの暗号化ができるため、データのセキュリティを高めることができる。
- サーバーソフトであり、365日24時間稼働を前提に考えられ安定性を念頭において設計されている。
- 強力なバックアップ機能が付いている。
- FileMaker Proを利用した同時接続数は、500以上をサポートしている。
- iPadやiPhoneからデータベースにアクセスできる「FileMaker Go」に対応している。
- FileMaker Proを利用せずに、safariやChrome、InternetExplorerなどのブラウザを利用して、データベースにアクセスすることができる「FileMaker WebDirect」という機能が利用できる。つまり、FileMaker Proを持っていない(インストールされていないコンピューター)方からもデータベースにアクセスして、データの参照や入力、検索などが行える機能が付いている。
FileMaker Serverの大きなメリットは、大まかにこのような部分であると思います。
今後は、両者の機能を比較しながら具体的な設定方法を解説していきます。
WebDirectについての詳細は、下記の記事もご参照ください。